chazu

2020/08/07 16:46

気づいているようで、気づいていない。


そんなことって案外多いものですが、加賀の紅茶との出会いは、まさに、その言葉通りでした。
住んでいる地域に、茶畑があるなんて。
車でちょっと走れば、茶農家さんと出会えるなんて。
地元の名前がついたそのお茶が、こんなにも香高く美味しいなんて。



石川県加賀市には、江戸時代から続く茶畑が今も広がっています。
長い歴史の中、茶畑の規模は小さく小さくなって、一時は無くなる寸前までになったそうです。

茶畑がある南加賀・打越という地の人達は、
春摘み茶葉のフレッシュで眩しいグリーンや、
製茶工場から広がる茶の香りを、
どうにかして未来に継いでいきたいと思いました。
地域の貴重な特産物と独自の茶文化を、守り抜きたいと。

そこで、地元の方々総出で茶の苗木を植え、
何とか地元に販売できる量くらいにまで茶畑を増やしたそうです。



茶農家さん達は、みんなが安心してお茶を楽しめるように、
できるだけ農薬を使わず有機肥料で、茶畑の生命循環を大事にしながら、お茶を作っています。
だから、てんとう虫さんが呑気に遊びに来たり、
受粉に協力してくれる虫達が集まってくる様子もあって、
茶畑は賑やかですよ。



最初は煎茶やほうじ茶だけを作っていた茶農家さん達でしたが、
若い人達にも飲んでもらえるようにと、石川県のお茶屋さんと一緒に紅茶作りを研究して、
「加賀の紅茶」を誕生させました。

さて、私がこの「加賀の紅茶」に出会ったのは3年前です。
打越の「加賀の紅茶」のパッケージデザインを担当したことがきっかけ。
それまでは、石川県に住んでいるにもかかわらず、
打越の方々の歩みはおろか、茶畑があることすら知りませんでした。



茶農家さんと初めてお会いした日、
茶農家さんは湯量や湯の温度を守り、丁寧に紅茶を入れてくださいました。

そして、一口


え... なにこれ...
いい香り!!
それに、美味しいんだけど!!!



正直に言います。油断してました。美味しいだろうけど、そこそこだろうと。
渋みがしっかりあって、甘みも感じる。フワッと体が温まって、気分もいい。
もっとどうぞと、すすめられるがままに、今度はお砂糖やミルクをたっぷりいれて。
紅茶らしい渋みの輪郭がちゃんあって、美味しいおいしいミルクティー。

茶農家さんに、すごく美味しいです!って伝えると、
良かったと安堵して魅せてくれた笑顔は、今も忘れません。



もう一つ、正直に言います。
自分のこの感想は、贔屓目ってやつかなと思ってました。この次点では。
私は、お茶のプロでもマニアでもない、しがないデザイナー。
お茶に関しては一般人ですし。

それから私は、「加賀の紅茶」を周りの友達に配り始めました。
お茶って案外、渡しやすいし受け取りやすいギフトだし、みんなの感想も聞きたかったし。
すると、美味しいねー、加賀に茶畑があるんだねーと、みんな興味を示してくれました。



金沢で、紅茶のベーグルを作っているカフェのオーナーさんに「加賀の紅茶」を渡して、
後日感想を聞きに行った時のこと。
美味しいからベーグルや焼き菓子に使うとどうなるか試作したいと!
その2ケ月後には、限定数で「加賀の紅茶」パウンドケーキを販売してくれ、見事完売!

(もしかして、贔屓目じゃなく「加賀の紅茶」ってすごく美味しいかも!)



私が確信した、最後の一撃は、これです。

紅茶のプロの方の感想が聞きたくて、
質の高いダージリンやアッサムの紅茶をいただける京都の紅茶専門店さんに、
良かったら時間がある時に飲んでみてくださいと「加賀の紅茶」をお渡しして、
1ケ月後に来店。
厳しい批評を覚悟して行ったんです。
世界のお茶を飲んでいるプロからの意見、どんな言葉も甘んじて受けようと。

「飲みましたよ。この紅茶、どうやったら取り扱えますか?」


え  ????!!!!!



「すごくバランスの良い美味しい紅茶だから、もっとたくさんの方に飲んでもらいたい。
お店のメニューに加えたいです。」



「加賀の紅茶」を最初に飲んだ時の感覚は贔屓目なんかじゃなかったと、
確信を得た瞬間でした。
そして嬉しかったのは、「加賀の紅茶」を飲んでくれた皆さんが、
加賀の茶畑を見てみたいと、興味を持ってくださることでした。

もっと「加賀の紅茶」を発信して、加賀の茶畑のことを知ってもらおう。
大事にお茶作りの歴史を守り続けている、打越の皆さんを応援したい。
だって、誰もが美味しいって、喜んでくれるお茶なんだから!

  


私は、「加賀の紅茶」をたくさんの方に試してもらいやすい
小さなサイズのパッケージに紅茶を詰めて、販売することにしました。
それが茶図の始まりです。

旅の先々で、人に会うたび、「加賀の紅茶」の話をしました。
買ってくださった方々の

「美味しいね。加賀の茶畑を見てみたい。」

そんな言葉に、心踊ります。

茶図という名は、
お茶を通じてたくさんの人に出会う旅の地図
という意味を込めたものです。


石川県では、いろんなお茶屋さんが、
打越の茶畑で作られた「加賀の紅茶」を販売してくださっています。
それぞれパッケージは違いますが、出どころは同じ 打越製茶組合(茶農家さんの組合)です。

また、石川県の観光地のカフェや飲食店でも人気メニューで、
金沢の21世紀美術館内のカフェなんかでも味わえます。


けれど、石川県に住んで「加賀の紅茶」を飲んでいる方々でさえ
南加賀・打越の茶畑のことを知らない人が多いのです。
そして...  その茶畑を守る、次世代の人がまだ見つかってないことも...



茶図の紅茶がきっかけで、加賀の茶畑を知ってくれたり
その茶畑に興味を持ってくれたり、茶農家さんたちを応援してくれたり
次世代を担おうとしてくれる人が、カッコよく登場してくれたらいいなと、思っています。



気づいているようで、気づいていない。


あまりにも身近にあるものの価値。

身近にいる人達が背負っている未来。


私は、お茶を通じて、気づきました。


  

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